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起業訪問記15

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鎌倉の古民家再利用のアトリエハウス主宰

 

アトリエハウスの仕掛け人、島津克代子さん。この地のパワーをもらいながら、鎌倉からアートや文化を発信。 
(鎌倉市山ノ内)

 

谷戸の奥、山に囲まれた約500坪の敷地。ウメが咲き、コブシのつぼみがふくらみ、ウグイスのさえずりが響く。再生したのはここにある築70年の古民家。(鎌倉市山ノ内)

 

古民家を再生したアトリエハウスでは現在、1ヶ月に10ほどの教室がある。薬膳&ヨガ、書道、創作和菓子、アロマセラピーなどなど。ほかに島津さんが企画する異文化交流などのイベントも含めて場の活用が進んできた。「このアトリエをシェアするという考え方で、各教室の主催者には借り料を払っていただいて、このスペースを使って自分の生徒さんたちに教えることができるような仕組みです。」と、島津さん。準備を進めたのは昨年夏から。そしてこの場所を、たからの庭と名付けた。

その由来は——たからの庭があるのは北鎌倉、浄智寺奥にある敷地。ここを囲む山が金宝山。その名もお宝の山。鎌倉から室町時代に栄えたお寺とともに由緒ある一帯だったが、その後はひっそりとしていた山と谷戸。ここに再び活気がでてきたのは大正時代の末以降。ジャーナリスト関口泰が谷戸に移り住み、昭和になってからは戦前、戦後にかけて作家の卵や映画関係者、日本画家などが住むようになってきてからだ。
さらにである。島津さんが仲間とともにこの地を再開拓、再生してアトリエになった古民家はこの金宝山にすっぽり囲まれているだけでなく、家屋は陶芸家久松昌子が窯を築き、昭和15年には制作場として建てたものだった。
「ふとしたご縁から話が進んで、浄智寺さんの和尚さんからこの家の相談をうけました。」と島津さん。陶芸家のお孫さんの代まで別荘などにも使われていた家だが、その後、荒れるままで、借地だった敷地ごとお寺さんに戻され、そのままになっていた。

島津さんは夫の健さんとともに、鎌倉に残る古民家の保存や再利用のプロジェクト、「鎌倉古民家バンク」を進めている。具体的には宅地建物取引業者として、古民家の所有者と古民家大好きという人を、賃貸や売却を通してつなげる仕事である。古民家好き街町並み保存や街づくり活動が高じて不動産業者になった二人。「私が2年ほど前に宅建の資格を取り、共同で株式会社を経営していくことになりました。」扱う物件は、ふつうの不動産業者なら嫌がる、車の入らない路地奥など、“難あり”のものが中心。若い人たちに人気の鎌倉住まい。一方で維持管理に手がかかる古い家。うまくマッチングしていくことで街づくりへも貢献できるビジネスの展開である。

数年前、「鎌倉では、地道な起業はなかなか難しいですよね。」地元の女性たちの起業を調べてみたいと相談したわたしに、島津さんの返事は少々、つれなかった。だが、もっともでもあった。観光客目当ての資本が外から入ってきて、地元の商店や事業所が苦戦を強いられた。それでも、いろいろ取材していくうちに、ものづくりとその販売、レストラン、花屋さん、アロマセラピー、イベント企画など鎌倉を基盤に、女性たちが個性あるビジネスを展開しているのに、こちらも話を聞きながら嬉しくなることが多かった。若い人たちの移住組も増えてきて、自分たちや地元の課題に向き合いながら仕事を起こしていく人たちにも出会えることができた。そして島津さん自身もかつて、メディアで仕事をしていたキャリアを活かしながら地元密着型の活動を展開していた。例えば、鎌倉の食案内の“名著”、「かまくら楽食日記」の3人メンバーのひとりとして、7年かけて自腹でレポートし、おいしいお店など140店を紹介、地元のお店を応援した。さらに、鎌倉の子育てガイドや病院情報もネットで立ち上げた。また、路地裏祭りや芸術祭なども仕掛けていった人。「都心から鎌倉に移り住んで13年、子育てしながら、地元でも必要なもの、ほしいものを仲間に呼びかけながら実現していくうちにネットワークが広がっていきました。」

このようなさまざまな活動の延長線上にオープンしたのが、たからの庭。
「それで採算は?」「大丈夫です。」わたしの質問を待っていたように自信のある返事。
家の再生などにかけた費用、数百万円。これを8年で割って年間収益が入るようなビジネスプラン。すべりだしは順調という。8年というのは、お寺さんから有限で借りた敷地の期限。8年経て、建物の耐久状況などをみながら、再検討することになっている。
アトリエハウスは、会員になると6畳の和室、20畳分のホールなどのレンタル料が半額になる。みんなでこの家を維持しながら、この地のパワーをもらいながら、これからもたくさんの宝を生み出していきたい、と島津さん。人と場をプロジュースする仕事の立ち上げに期待したい。

http://takaranoniwa.com/