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起業訪問記14

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起業訪問記14 

オンリーワン、私だけの仕事を開発中


このカブ、甘い! 柿みたいな味だ
皮と筋を花びら状にむいてもらってかじってみる篠原久仁子さん。
(茨城県つくば市・市村農園)

ある集まりでのこと、中学校の学校カウンセラーをしている人がふとこぼしたのは、生徒たちが給食をほとんど食べないことだった。何かいい解決方法はないかしら…

カレーやハンバークなど洋風メニューはまだいいほうだが、野菜の煮物、炒め物など和風または野菜中心になるとほとんど手をつけないまま。その残った量を見るのもつらいし、生徒たちのお腹も心配だ。午後の授業や部活に空腹のままのぞむのだろうか。居合わせた人たちからひとしきり嘆息や意見、提案らしきものが出てきて結局、給食は給食に留まらず、食のあり方の問題へと広がっていったのだが… 期待されるような妙案は難しかった。

野菜ジャーナリストでベジタブル&フルーツマイスターの資格をもつ篠原久仁子さんにさっそく「どう思います?」
野菜を作っている人たちはどんな人たちなのか、どうやって栽培されているのか、その辺がイメージされてないような気がする。こんなに大切に育てられ、野菜の命はこんな風に息づいていることなど、もっと知ってくると親しみ感というのがぜんぜん違うはず」。と篠原さん。
小さい子どもたちの例ですが、と前置きして篠原さんの野菜開眼にもなった話をさらに付け加えてくれた。「ピーマンマンってごぞんじですか?」「??うむ〜うううう、なにものかな?」
調べてみると、はい、はい、ありました、グリーンマントのピーマンマン。すごい、ニガニガだって平気だ。ニガニガパンチでバイ菌もやっつけろ。こうして子どもたちはピーマンマンに味方して、ピーマンも食べるというわけ。うまくいくかな。でも相当な人気者らしい。10代の子たちにこれが受け入れられるかわからない。だが、従来型の、野菜は体にいいから食べなさい式では説得力はないかもしれない。野菜ダイエット、野菜美白、野菜癒しなどなどひと皮もふた皮もむけた“ニュー野菜”でデビューということかな。

「そうなんです。わたしの場合は生産者にきちんと向き合って、現場のご苦労や野菜の実情を知りながら、そのかわいくて、おいしい魅力を伝えるメッセンジャー役です。」

生産者で、同じく野菜ソムリエの市村典子さん(右)に、種蒔き時や品種について教えてもらう篠原さん。
(茨城県つくば市・市村農園)

テレビ制作会社に就職して6年半、夢中で仕事をした。とにかくテレビ大好き人間。家族でテレビを見る時間が一番楽しかったから、そんな仕事がしたいと、飛び込んだ世界。報道やドキュメンタリー番組の企画演出を手がけた。どちらかというと取材先やスタッフなど制作に関わる人たちのコーディネーションが得意だった。自分流のアイデアや発見が現場を活気づかせ、明るくした。ずっと続けていくつもりだったその仕事をやむなく退職したのは、長野にいる大好きだった祖父の死がきっかけだった。祖母は独りぼっちになってしまい、これまで一緒にいる時間をつくらなかったことを大きく後悔する。「このままではいけない、と思ったらあんなに好きだった仕事も吹っ切れました。」

長野にしばらく滞在し、祖母に刺激されて野菜を作ってみた。トマトの苗を植える時、「そんな小さな穴じゃトマトがいじけちゃうよ」と祖母。タネから育てた大根を収穫した驚きと喜び。これらが転機になった。「野菜たちがかわいくて、かわいくて。自分に子供がいたらこんな気持ちかもしれない、とまでいとおしくなりました」

それからすぐ、野菜ソムリエの資格取得に挑戦する。受講者は主婦が大半で、日頃の料理経験を活かして、レシピ開発を得意としていた。自分なら何を強みにできるのだろうか。この資格、最近の野菜ブームで“超”人気株に挙がっているようだ。ジュニア資格で10数万円、中級のベジタブル&フルーツマイスター資格が30万円弱になる。 民間認定だが、有資格者はこの8年で約2万5000人、時代を反映してか、いまでも講習説明会への参加に待ちがでるほどらしいのだ。

先月、厳冬の弘前へ出張した。今年12月開通予定の青森新幹線に合わせて、厳冬期の弘前をいかにPRしていくかのイベント・アドバイザーの一人として。雪の中に保存してある地元産の完熟野菜を味わうなど、寒さを楽しむ篠原さんのアイデアはふくらんでいく。3月は徳島県からの依頼で春野菜のフェアにもよばれている。茨城県土浦生まれで、地元特産のレンコン普及にも一役かった。
「農家さんたちは作るのに精いっぱいだし、身近に野菜がいろいろたくさんあるのが当たり前。その魅力に慣れっこになって、気がつかない場合が多いんです。外からの目線も大事なんですね。」

野菜ソムリエとして、もう一歩自分の経歴や個性を押し出せる仕事は何か。昨年から篠原さんは“野菜ジャーナリスト”を名乗るようになった。野菜を基本にもっと仕事として深めることができるかもしれない、と考えた結果だった。取材、執筆、レポーター、 講師、企画・アドバイザー、司会などなどこれまでの経験を基にさらに仕事を開発していけると手ごたえを感じたからだ。
「これなら一生続けていける仕事だと思います。祖母から吸収したもの、テレビ界で学んだ発想、農家さんたちから直接教えていただいている野菜のこと。みんなミックスしてわたしだけの仕事を築いていきたい。人生の数だけベジライフがある、がわたしの基本です。」開業1年目で、大学初任給ほどはクリアした。 資格取得への先行投資の甲斐もあった。「本当にラッキーな再スタートですね。これからもっと農家さんたちとつながっていきたいです。」

野菜や食を仕事にすると、どうやって気分転換をはかります?と聞いてみると、いまフラダンスに夢中です、とのこと。行く先々でおいしい野菜とお酒を味わってくる分、ダンスにも熱が入るらしい。今年は、新たに始まる講座を担当するのをはじめ、雑誌の連載で全国の郷土食を訪ねまわる取材も控えている。フラダンスもさらに上手になるでしょうね。

篠原さんのブログ↓

http://yasai-journal.com/