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起業訪問記13
水戸発、茶の香りと文化
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紅茶の歴史を講義する先崎キヨ子さん
(茨城県水戸市南町の紅茶館)
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茨城、内陸部の夜は相当冷えている。雪こそ降らないが霜柱はびっくりするほど伸びてくる。暖かさが持続する、とエコも兼ねて薪ストーブで暖をとるのは友人宅。冷える夜にはあったかいローヤルミルクティー、それとも少しリキュールをたらしてみましょうか。
こんなふうにちょっとおしゃれに、気軽に紅茶を楽しむようになった背景には、多分この人、先崎キヨ子さんのような紅茶のシニア・ティーインストラクターの功績も大きいのではないか。県内で初めての紅茶専門店を始めた先崎さん。23年前である。
当時、書籍販売の仕事をしていた。「とにかく本が好きで、若いころから本がそばにないと落ち着かないたちでした。トイレにも必ず持参するというような。。。」
そんな先崎さんの書籍の選択眼、センスがかわれてか、ある日、喫茶店の経営を任される話が舞い込んできた。これまでとはまったく違った業種。
「かなり迷ったんではないですか、それまでお仕事も順調にいっていたのでしょ?」と、たずねてみると、
「そうなんですが、でも何か新しいことにも挑戦してみたい気持ちも強かったですね。それは今も変わらないですが。」
その時、先崎さんが希望した条件はひとつ、喫茶店ではあるが文字通り茶、紅茶専門の喫茶店にすることだった。
場所は水戸中心街の商店街の一角。雇われ店長でスタートした店。紅茶専門店といっても格別、紅茶に詳しいわけではなかった。店の切り盛りと同時に紅茶の勉強に通う日々が続き、日本紅茶協会での研修を重ねてシニア・ティーインストラクターの資格を取得するまでに至った。
コーヒーならともかく、紅茶にお金を払って飲みに来るという感覚がほとんどなかった時代、土地柄もあったでしょうか。新しいことがなかなか受け入れてもらえない。それでもこの仕事は好きでしたし、勉強するのも楽しかったので夢中でやってきました。」
11年ほど前に独立を決意。それまで蓄えてきた資金を元に有限会社を設立して起業した。当時、地元でも女性起業家育成への関心が高まり、銀行からの融資の支援制度が始まったところだった。実積3年以上であれば無担保・低利子での融資。先崎さんはさっそくこの制度に応募して500万円の融資を可能にする。自己資金を合わせて1千万円ほどの資金を元に起業したのだった。
「度胸がいい、ともいわれましたが、これまでやってきたことを生かすにはこれが一番いい、と思いまして。」
先崎さんのビジネス展開への意欲と社会的な後押しである起業家支援制度がちょうどうまく結びついた。その地で10年ほど順調に進んだが、その店舗がビルの取り壊しで移転に迫られ、1年ほど前に駅よりの南町に店舗を移転した。このときも移転に伴う諸経費や店舗の改装費などにも融資を活用した。現在の店舗は1,2階のフロアーで60席という広さ。いまどきこのような広い店舗、という懸念もなくはなかったが、それならそれで使い途があるはず。先崎さんはいつも“これもまたよし”、と思考するタイプだ。このフロアーでは紅茶教室のほかにコンサートや展示なども行われている。
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店内にはホットするようなタペストリーやコミック「紅茶王子」などのある書棚も |
月の半分は講師業である。カルチャーセンター、公民館、学校などで紅茶を教える。主宰するティーエキスパート協会は6年前に自ら立ち上げた。月1回の2年コースでプロ育成。今では卒業生、会員あわせて400人ほどに。水戸中心に千葉や鳥取にも広がる。
「紅茶は発酵茶、となるとやはりその領域にも入っていかなくてはと、これまた勉強ですね。」茶の世界は広い、そして奥が深い。訪ねた国はイギリスはじめアフリカやアジア諸国。それぞれ固有の茶の味と歴史が広がる。その成果を昨年9月、自主研究論文「紅茶の歴史—発酵茶がどのように生まれたか」としてまとめた。
教室では紅茶にまつわる物語、グッズ、お菓子作りなども取り入れる。どうりで、ちょっとのぞいた教室では若い女性ばかりでなく、年配の男女も含めて、かなり広い層の受講者が楽しそうに講義を聞いたり、ティータイムを過ごしていた。
スタッフ3人も含めてフル回転の先崎さんにもうひとつ、「楽しい忙しさ」がこれから始まる。毎年2月末、商店会として女性店主を中心に、いろいろなお店も加わって“3店物語”というイベントを企画している。古くからの伝統ある店が多いので、伝来の店の“お宝”を展示するのである。6年前に先崎さんの音頭で始めた時が3店舗。今回の参加は10店舗になる“3店物語”。古い写真などの展示で参加する店舗も加えると20店に増える。
地元の活性化。あまり気負わず、長く継続していきたい、と始めたこの企画。しっかり定着しているようだ。
60代半ばになっても仕事っぷりも気持も昔とあまり変わってないような気がする、と先崎さん。「忙しくしているとき、新しいことを考えるとき、そんな時間が一番自分にあっている。」また新しいことを考えそうだ。
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