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起業訪問記10 

環境に配慮の資材でCSRの追求へ

 

4年前に改築した兼松まゆみさんの自宅には間伐材をふんだんに使用し、
“木使い運動”のモデルとした。(鎌倉市扇ケ谷)
古寺には欠かせない竹林だが、手入れあればこその風情。(北鎌倉の東慶寺)

横浜に拠点を置く船舶修理会社・株式会社横浜工作所の代表取締役であり、来年には次期社長の就任が待っている兼松まゆみさん。70人ほどの技術者と200に上る下請け関係者を取り仕切ることになる。すでに取締役歴29年、経営者の経験は十分備わっているものの、経済不況の荒波が立つなか、新たな事業の開拓への決断も迫られる立場ともなる。
「技術者がほとんどを占める業種ですから、私のような非技術部門からの登用も大いに意味があるはず。」とまずはゆるぎない信念。そして、次期経営の柱とするのがCSR=企業の社会的責任=の強化である。

1920年祖父の時代に創立された会社は、船舶修理で培った様々な技術を活かして地上プラント、特に環境プラント整備部門にも着手し、海から陸へとさらに発展をめざしている。

そして兼松さんがいま、一番関心を寄せているのが環境問題。住まいのある鎌倉が、宅地開発の猛威にさらされ目に余る光景に思い余って、持ち前の行動力で活動を始めたのは10年ほど前。行政とも連携して何とかしなくては…
4年前から相模湖周辺の水源涵養林の保護活動に邁進した。
「周囲にはなんで鎌倉でないのか、と言われましたが、直感的には山と海、森林と水との結びつきが納得できました。特に商売柄というのか、船と海の仕事が森林や山とつながることに気付いたことが大きな発想の転換へ。」
結局、民間の人たちの実践力が頼り。NPO法人緑のダム北相模・北鎌倉代表でもある。その活動を通して今度は鎌倉の古寺を抱く山や丘陵が竹林の浸食で荒れていく現状に居ても立っても居られない気持ちになった。仲間と始めたボランティア活動はまず、寺社の了解を得て竹林の手入れ、部分伐採。北鎌倉東慶寺では伐採した孟宗竹から竹炭を作り、参拝者のお土産用に販売するようになった。
ここで兼松さんが注目したのが炭。その効用はいうまでもなく再注目され、広く知られているが、改めて環境問題と事業化との結びつきを一本の線で意識するようになった。

そもそも、兼松さんを訪問したきっかけは、竹の炭。初めてお会いしたときに試食で味見をした真っ黒い蜂蜜に感激。そして炭の効能をたっぷり聞かせていただいたことがあったからだ。蜂蜜の黒い正体は竹炭パウダー。この黒い粉は食品添加物適用の商品であり、そばやパンなどにも混ぜて黒く仕上げることができるというものだ。

樹木、竹の保護と伐採後の活用。その実践として間伐材をふんだんに使っての自宅の改築では、木材を使いこなせる建具屋、家具屋などの腕の見せ所でもあった。もっと国産樹木の間伐材活用を、と“木使い”を勧めるのも兼松さんの大事な仕事。

今後はさらに、NPO人としての効果的な活動と事業家としての社会貢献との塩梅をいかになしていくのか。
技術者と管理部門総勢80人のスタッフとともに、次のミッションは、環境、社会、技術との調和、と兼松さんは新たに事業を起こす気構えである。それはまず、船舶修理の中でも船体塗装は、海の汚染や修理にあたる人たちへの健康配慮が必要とされるだけに、炭の活用を早期に事業化していく計画の実行である。そのための技術者の登用や必要なデータの収集が着々と進んでいる。

間伐材木、竹など私たちの身近にある自然材、それらが最新技術と結びつくことで有効活用の途が広がり、次のビジネスモデルとしての好事例をまたひとつ、積み上げることに期待したい。