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起業訪問記9

「ジュエリーと事業のデザイン力が結実」

お客さんからのアイデアもデザインのヒントになると話す桑原ヒロミさんの
制作工房は稲村ケ崎、店舗は鎌倉駅西口の市役所向い。
それぞれのスペースにオーナーである桑原さんのセンスが凝縮していて美しい。

 

有限会社「工房ガラ」とジュエリーショップ「ガラ・ドゥ」のオーナー兼デザイナーである桑原ヒロミさんが会社を始めたのは20年前、店舗は10年前からだ。大学時代は美術史を専攻、その間、自ら制作を手掛けてみたいとジュエリー加工を始めた。
それから30数年、デザイナーとしても事業家としても自信をもった着実な仕事ぶりが伝わってきた。

「わたしのデザインの特徴ですか。はじめは身につけるのに少し抵抗感がある、使いづらいということですね。」つい無難なものを選びたくなる買い手の心理を上手に変えていく制作者の仕掛けとは。いかにも指輪、ネックレスとわかりきったようなデザインはしない。桑原さん流にいえば、「ゼロ地点からの制作」であり、既成のものにとらわれない。それは「金属の質感や原石そのままのフォルムを生かしたオブジェのようなジュエリー」となる。

たとえば、パイライトサンのネックレス。これはヒトデの化石を3㌢ほどの角形にスライスして使用する。2億年経過したものだ。思わずみとれてしまう。ブルーのエメラルド、アクアマリンの原石も同様の工程。また、シルバー板に布の織目、ガラス瓶の底などを押し当ててできる凹凸を模様とした大きめのブローチやネックレス。デザインすることによって引き出される素材の美しさや力、ストーリー性の表現が買い手に伝わってくると、今までとは違うアクセサリーとして、身につけてみたい一品へとなるようだ。実は、そうなったのがわたしだったが。。。

すでに指輪、ネックレス、ブローチの装身具3点にそれぞれ400種のアイテム。創作アイデアのみなもとは? 「廃墟」だそうだ。デザイナーの視点は壊れゆくものの中に壊れない美をみているのだろうか。風化した色彩や造形のおもしろさなのだろうか。

もう一つの特徴をあげるとすれば、価格の設定を抑えていること。特に、若い人たちが買いやすいアイテムも揃えることで、幅広い年代の客層を確保していく。ジュエリーのリメイクも需要が多い。古い宝石や記念にもらったイヤリングの片方を失くしたので、残りのほうで指輪を作ったり、古い宝石をパーツにしたアクセサリーなど。今後も広がる分野だ。

桑原さん、かつては大手のジュエリー会社でデザインを任されていた時期もあった。だが、自分のオリジナル・ブランドで制作していきたいと起業に踏み切った。現在、スタッフは工房と店舗に4人ずつ。週に1回はお店に出て、お客さんの動向をみる。顧客リストは3000人を超えた。桑原ジュエリーファンは全国に。来年2月の国際ジュエリー見本市への出品も決まった。その広報用パンフレットに掲載される数社のうちの1社にも選ばれた。厳しい経済状況の中でこそ、デザイナーとしての本領を発揮して、納得のいくものづくりをしていきたいという桑原さんの新たな試みが楽しみだ。

ガラのHP→ http://gallaworks.com/